私書箱に住民票を置きたいと言われても・・・ 目的は健康保険を使用したい

海外で生活をする場合、3カ月以上滞在する人は在留届を出す義務があります。観光や旅行ではなく滞在、生活する場合には提出しなさいというものです。その為には、出国に際して市役所や区役所で転出届を出しておかないと在留届も出すことが出来ません。身分の証明や安否確認、トラブルの際の手助けなど大使館、領事館への届け出はメリットが多数あるのでお勧めしますが、実際は在留届は50%程度しか出されていないとも言われております。海外赴任の場合には会社の規定などで決まっており選択肢はありませんが、在留届の存在を知らないケース、住民票を抜きたくないので(転出届を未手続きで)在留届を出せないケースがあることも影響しているようです。

 

住民票を抜く最大のメリットは「在留届とセットで活用し、実際の居住地を明確にしておくこと」ですが、海外にいる間「年金、国民保険料、住民税などを払わなくて済む。」というお金を判断材料にされるケースも多いです。逆に考えると「お金に関係なく日本の生活も維持しておきたい。」との考える場合、住民票は抜きたくないと判断することもあるようです。在留届には義務がありますが、転出届は自由です。出すか出さないかは規定も罰則もありません。海外滞在期間や状況により本人の判断となります。

 

そんな住民票残したい派の方から問い合わせがありました。「弊社の住所に住民票を置きたい」とのことです。郵便物やお荷物をお預かりするのと住民票の住所として契約するのでは全く意味合いが異なります。弊社でも即答でお断りさせて頂きましたが、どの私書箱でも承諾することはないでしょう。住所貸しやバーチャルオフィスも検討されるとのことでしたが少し心配です。当初の目的は国民健康保険の利用とのことでしたが、いつの間にか住民票を移動できれば他の問題も全て解決と思い込んでいる文面だったからです。

 

ネットでは、同じような悩みを持ちクリアしたケースを検索することも可能です。今回のケースでは、「役所に住民票とは別に連絡先・郵便物の配送先を指定する」、「一時帰国の度に住民票を登録して国民健康保険に加入する」と言った方法が見つけられます。また、「住所貸しは違法に当たることもある」とも出てきます。住所貸しをお断りすると同時に別の方法としてそれらのことはお伝えしましたが、その後の連絡はありませんでした。やはり、住民票へのこだわりがあるようです。無事、良い方法が見つかればよいのですが…。

 

住民票を移動して国内引越ししたことにするというのはとても荒業で危険な行為です。実家が無いので困っているという事ですが、他人にお金を払って委ねるというのであれば尚更です。海外に出国していない事にすれば一度に対処可能でも、実態が伴なわないことをすると法に触れるケースもあります。決してお勧めできる方法ではありませんし、残念ながらご協力もできません。

 

日本の生活を残したまま海外に居住するというのはご希望として多いです。ある程度の維持は可能ですが、どんなサービスを利用しても日本にいる場合と全く同じという言うわけにはいきません。一つ一つ対応策で対処するしかありません。面倒でもできることとできない事のそれぞれの落としどころを考えることはとても重要です。

 

住所貸し・・・ネットには実体がサイトからは推測しきれないものも混在しています。悪用されるリスクもありますので十分に注意が必要です。

 

バーチャルオフィス・・・秘書業務がメインで会社の住所登記は可能な場合もあります。その名の通り、オフィス利用のためのものですので、居住住所となると全く別の話です。住民票の移動はまず無理です。